<<前のページ | 次のページ>>


2011年9月7日(水)

KS405−089
9月の社長メッセージ 
     「高調波知的劣化診断システム」は設備のストレス評価ツール
               〜風力発電の多発する事故から学ぶ信頼性の確保〜 

 東日本大震災で甚大な被害を受けたのを機に、エネルギー政策の見直しが余儀なくされています。その中で再生可能エネルギーはエネルギー政策の新しい柱の一つとして期待されています。とりわけ風力エネルギーは、地球環境の保全、エネルギーセキュリティ確保可能なエネルギー源として認められ、多くの地に風力発電所や風力発電装置が建設されています。開発可能な量だけで世界全体の電力需要を充分に賄える資源量があるとされているのです。この風力発電は、世界的に大規模な実用化が進んでおり、2020年には世界の電力需要量の約1割に達すると言われています。2010年末の世界累計設置容量は中国の42.3GW4230kW)をトップに、米国(40.2GW)、ドイツ(27.2GW)、スペイン(20.7GW)、インド(13.1GW)が続き、世界全体で194.4GW、日本は20073月時点で総設備容量は約168kW(原子力発電の2基分相当)しかありませんでした。しかし、福島原発事故から6ヶ月を経過しようとする今、流れは大きく変わろうとしており、2030年までに2000kWを導入するシナリオが提示されています。
 風力発電は環境負荷の小ささや化石燃料の使用量削減、エネルギー安全保障の観点から、今後も増え続けると予測できますが、故障や事故も後を絶ちません。風力発電の風車は風向や風力の変動を常時受けているため、風車や発電機の回転軸、軸受には過大なストレスがかかっています。これら機械系で発生する機械ストレスにより回転軸の曲がりや軸受損傷が生じ故障が発生します。また、繰返し発生する機械ストレスは発電機の巻線にも影響を及ぼし、電圧ストレス、熱ストレスを誘発させ巻線の焼損、火災という事故につながっています。更に機械ストレスは、インバータにも悪影響を与えます。すなわち、発電機の巻線に発生する電圧ストレスや熱ストレスは、原動機(風車)と発電機の電力バランスを崩し、インバータの制御異常、基板や電力素子の焼損にまで進展する事例がしばしば見受けられます。
 風力発電の最大の敵は強すぎる風とも言えます。風力発電機には定格風速があり、定格を大幅に超える速度で運転すると、原動機の焼損やブレード(回転羽根)の破損などを招く場合があります。
 そのため風速が過大な場合は、保護のためにブレードの角度(ピッチ)を変えて速度を抑制する(フェザーリング)か、場合によっては風車と発電機を一時的に切り離し、発電を停止させています。

しかし、これらの対策は故障や事故の予知(保全)に生かすものではなく、後向きな現象対策であるため、例えば風以外の外力によるもののストレス回避には無力なものです。風以外の外力とは、鳥類が風力発電のブレードに衝突(バードストライク)する場合に当たります。この時もブレードの衝撃が風車や発電機の回転軸や軸受にストレスを与えます。
 また、落雷(主として誘導雷)によっても発電機の巻線に電圧ストレスが生じ、火災事故につながります。こういった風力発電特有の突発事故を防ぎ、電力の信頼性を確保して、不安のない幸福な〔今月の花ヒャクニチソウの花言葉のような〕社会の実現に向けて、エイテックの「高調波知的劣化診断システム」が活用される日が近いと確信しています。

  












  百日草(ヒャクニチソウ)
 花言葉「幸福、絆」

 
                                                  2011年9月7日
来月のメッセージも是非ご覧下さい 
                             エイテック株式会社



2011年8月2日(火)

KS405−088
8月の社長メッセージ 
    安全思想を支える「高調波知的劣化診断システム」
               〜中国高速鉄道事故から得られた知見の検証〜 

 2011723日午後10時前(日本時間)に、中国東部の浙江省(温州)で高速鉄道の脱線・転落事故が発生し、200人以上の死傷者を出す大惨事になり世界を震撼させました。一方、高速鉄道で世界の最先端を走り続けてきた日本の新幹線は、開業以来47年間乗客の死亡事故を一度も起こさないできています。高速鉄道で技術先進国のドイツでさえ、高速列車「ICE」で1998年に死者101人を出す同国鉄道史上最悪の事故を起こしています。そこで、2007年より営業運転を開始し、急激過ぎる発展をとげた中国高速鉄道の安全性について、今回の事故から得られた3点について検証してみます。
 まず1点目は、鉄道運行の大原則である「先行の列車のいる区間には、後続列車は進入してはならない」という原則が守られていなかったのです。中国の高速鉄道には、信号を受信して自動的に列車を減速・停止させる「自動列車保護装置(ATP)」という安全運行システムが採用されています。日本の新幹線に導入されている「自動列車制御装置(ATC)」と基本原理は同じで、停電や故障などで列車が停止すると自動的に後続列車のブレーキがかかります。しかし、中国のATPは今回作動しなかったのです。
 日本のATCは、車両の位置検出に信頼性が確認されている「軌道短路」を使っています。これは、路線を1.5qごとに区切り、左右のレールに弱い電流を流します。車両がその区間に入ると鉄製の車輪を通じてレール同士が短絡(ショート)し、その情報が総合司令所に届くのです。それぞれの区間ごとに最高速度を定め、車両が同じ区間に入ることがないように運行を管理しています。全地球測位システム(GPS)のような最先端技術を採用すれば、車両の絶対位置把握はもっと簡単ですが、それをあえて避け、半世紀以上にわたり安全が確認されている技術を用いているのです。
 2点目は、もう一つの大原則についてです。それは、何らかの原因で信号が作動していない時は、その区間への進入は厳禁ということです。ちなみに、高速鉄道の場合は、目視による信号はほとんど意味をなさないので、列車の運行管理システムないしは自動列車停止システム(ATS)の中で同じように運行の指示をすることになっています。中国では欧州連合(EU)の鉄道委員会が高速鉄道の標準方式として開発した列車の位置や速度、距離などの情報を無線で送信する「ETCS2」を全面採用しています。このシステムは国をまたいでの高速鉄道の乗り入れをスムーズにするため開発されましたが、技術が複雑なため欧州でも普及が難航しています。現在、本格使用しているのはフランスやスイスなどの一部線区に限られているのです。

3点目は、落雷対策です。落雷時の電流という「サージ」を「アース」へ流す対応を車両にしておくのは、現代の鉄道の常識ですし、車両以外の電源設備や架線設備、ATSや信号システムを落雷から守るのも同じです。設備の周囲に大電流に対して十分な容量を持った避雷針や誘導雷保護装置を設置する、電源は非常電源を用意するなどの対応をすることも必要です。落雷に対して脆弱であるとするなら、これも高速鉄道の常識に反するのです。
 
高速鉄道は想像以上にデリケートなため、車体の振動や制御装置の異常などによっても、安全運行に支障をきたします。エイテックの「高調波知的劣化診断システム」が、高速鉄道の不幸な事故をなくし、安全思想を支えるツールとして、光輝な〔今月の花ヒマワリの花言葉のような〕システムになることを願っています。













  向日葵(ヒマワリ)
 花言葉「光輝、あこがれ」

 
                                                  2011年8月2日
来月のメッセージも是非ご覧下さい 
                             エイテック株式会社


2011年7月6日(水)

KS405−087
7月の社長メッセージ 
    モータの効率化に寄与する「高調波知的劣化診断システム」
               〜電力使用制限がスタート、余力1%を切れば計画停電も〜 

 政府は71日、東京電力と東北電力管内の大口需要家(契約電力500Kw以上)に対し、電気事業法第27条に基づく電力使用制限令を発動しました。夏の電力不足に備えるため、昨夏比15%の使用削減を義務付けるもので、違反すれば100万円以下の罰金が科せられます。原子力発電所の運転停止が相次ぐ中、関西電力も管内の利用者に71日から15%の節電を求めるなど、全国に節電の動きが広がっています。経済産業省は、電力使用が増して大規模停電の恐れが高まった場合(余力が1%を切る場合)、地域ごとに電力供給を止める「計画停電」を予告し、節電の徹底を呼びかけ、当日朝に第2報を発令して計画停電の有無を知らせると発表しています。
 しかし、節電による経済産業への悪影響は絶対避けなければなりません。そのためには省エネによる節電に企業は積極的に取組み、必要な投資を行うことが肝要です。
 そのような中で、国際エネルギー機関(IEA)の最近の調査により、世界中の電力消費の45%をモータが占めることが明らかになったのです。モータはポンプ、ファン、コンプレッサー、コンベヤなどさまざまな産業機器に組み込まれ、しかも大量にエネルギーを消費しているというこの数字は衝撃的です。全世界の発電所のおよそ2基に1基はモータを稼働するためだけに発電しているのです。
 IEAの研究は、モータのエネルギー消費分析を世界で初めて行ったもので、モータの電力消費をどの程度削減できるかも提示しています。多くのモータは依然として非効率であり、必要のない時に稼働している場合もあります。このため、モータの電力消費の2030%の削減は可能であり、この削減可能な電力は世界中の電力消費量の914%に達するとしています。
 ただし、モータの電力消費の削減はさまざまな障壁によって困難であるとIEAは指摘しています。スイスABB社の最高経営責任者(CEO)のジョー・ホーガン氏は、日刊工業新聞の記事(平成2374日付)で、製造業者の60%は過去3年間に生産財や工場設備のエネルギー効率化のための投資を行っていないと言っています。その理由として、経営者は@エネルギー効率化を目的とした投資の財務事例がない、A資金の不足、Bエネルギー効率を高める手段に関する情報がない、といった三つを主な理由に挙げています。しかし産業界の電力消費の大部分をモータが占め、稼働コストも大きな負担となる事実を知れば、エネルギーの効率化投資への考え方も大きく変わるかもしれません。特に今の日本においてはこの省エネ投資は焦眉の急なのです。

IEAの報告書は、エネルギーと温暖化の間に横たわる議論の溝をも埋めるもので、米国、カナダ、中国など政府が活発に取り組む国々では高圧インバータの設置などによりモータ効率の水準が非常に高くなっています。欧州共同体(EU)では、モータの効率化を図るための対策が616日にEU地域で発効し、2020年には22基の原子炉の年間発電量に匹敵する電力消費を低減させ、少なくとも年間約13800億円の経費削減を見込んでいます。IEAの報告書はモータが担っている大きな役割を認識させるもので、エイテックの「高調波知的劣化診断システム」は、モータの高効率稼働を支援する、忍耐〔今月の花マツバギクの花言葉〕のシステムと呼べるもので、節電戦略の中心に据えるべきツールであると言えます。













  松葉菊(マツバギク)
 花言葉「忍耐・心広い愛情」

 
                                                  2011年7月6日
来月のメッセージも是非ご覧下さい 
                             エイテック株式会社


2011年6月8日(水)

KS405−086
6月の社長メッセージ 
    状態監視技術に革新をもたらす「高調波知的劣化診断システム」
               〜東日本大震災による電力需給の逼迫が設備保全の概念を変えた!〜 

 東日本大震災により全国的な電力不足が懸念されています。中部電力浜岡原発の全面停止により、東日本にとどまっていた電力不足がドミノ倒し的に西日本地域に広がる可能性が出てきています。この電力不足は自動車や半導体、電機業界などの生産活動にマイナスとなる恐れがあり、回復基調にある日本経済には痛手となります。そのような中で設備保全の果たすべき役割は何かを考えてみます。
 まず第一に、稼働中の設備の状態把握が必要となります。どの設備も一律に時限的に更新を行うよりも、個々の設備ごとに状態を監視して大きな事故を未然に防ぎつつ、適正な対策を施し、機器寿命の延長を図って使用限界まで設備を利用することで保全の経済性を高めます。この時の設備診断は、設備の停電を必要としない運転状態で行うオンライン診断でなくてはなりません。このオンライン診断で最近注目されているのは電磁診断技術です。電磁診断技術は現在のところ従来の回転機器に対する振動診断の弱点を補う技術として期待されていますが、原理的には高調波診断技術に属すると言えます。すなわち、電磁診断技術は回転体の運動に伴う磁場変化を検出することで、回転機器の健全性を評価する手法です。使用する電磁センサーは高調波センサーと類似のもので、従来の振動診断と比べ、回転体の状態をより直接的かつ簡便に評価することが可能となっています。診断項目も軸受の他にカップリング異常、軸アンバランスなど高調波診断の診断項目の一部と同じものです。高調波診断が電流高調波を計測するのに対し、電磁診断はケーシングにセンサーを当てがって、回転体の通過による電磁場変化を捉え運転中に異常部位を透視的に評価しています。
 第二に、稼働中の設備の効率評価が必要になります。高調波診断技術は、機器の電力バランスを計測することにより省エネ性を評価します。そして、設備の高効率運転により電力使用量の削減を可能にしています。(この省エネ評価については今年4月の社長メッセージ(KS405084)5月の社長メッセージ(KS405085)をご一読下さい)

第三に、稼働中の設備の状態監視は安全に行われなくてはなりません。電磁診断は振動診断のようにケーシングに接触させて行いますので、水中ポンプや高所取付ファン、またアクセス不可能な設備、また巻線の絶縁や変圧器、コンデンサなどの静止器の診断はできません。一方、高調波診断は設置設備と離れた場所にある制御盤内のリード線に非接触で高調波センサーを向けて計測するので安全であり、また巻線の絶縁や静止器の評価も可視的に行えます。
 プラントの安全性の更なる向上のために、状態監視技術に革新をもたらす「高調波知的劣化診断システム」は威厳のある〔今月の花シャクナゲの花言葉のような〕システムとして、電力需給の逼迫した日本の産業界に活力を与える救世主になり得る可能性があります。













   石楠花(シャクナゲ)
   花言葉「威厳・荘厳」

 
                                                  2011年6月8日
来月のメッセージも是非ご覧下さい 
                             エイテック株式会社


2011年5月19日(木)

KS405−085
5月の社長メッセージ 
    省エネ革新を推進する「高調波知的劣化診断システム」
               〜東日本大震災がもたらした負の連鎖を断ち切ろう!〜 

 東日本大震災の発生から2ヶ月が経過しました。産業界は経済活動の復旧を着々と進めていますが、一方で政府の対応は遅々として進んでいません。特に深刻なのは二次災害と言うべきエネルギー問題です。電力不足が新興国並みに慢性化する中では経済の発展などあり得ません。原子力に対する不安と不信を断ち切り、再生に向けた基盤を構築するのが政府の最大の責務と言えます。
 エネルギー政策を所管する経済産業省・資源エネルギー庁の「エネルギー白書2010」によると、石油ショックのあった1973年度に比べて、製造業の2008年度の生産量は約1.7倍に増加したのに対し、エネルギー消費は0.9倍と減少しています。生産量とエネルギー消費量の増加が比例していた1973年度以前に比べて大幅に効率化されました。石油ショックは日本が世界トップクラスの省エネ技術を獲得するきっかけになったのです。
 東京電力福島第一原子力発電所の事故に端を発する電力不足で、政府は夏場のピーク需要時に前年比15%の電力使用量削減を求める方針を立てています。更に地球温暖化抑止のための取り組みで、2020年に1990年度比25%の二酸化炭素(CO2)排出量削減を中期目標に掲げており、日本は新たな“エネルギーショック”に直面しています。
 石油ショック以前の日本は過度に化石燃料に依存する脆弱な経済体質でした。その時代に逆戻りすることは許されないのです。一方で太陽光をはじめとする再生可能エネルギーへの移行には、福島第一原発の解決に要する以上の時間がかかります。しかも化石燃料の代替を優先しなければ地球環境問題に対処できません。従って原子力は今後も長期にわたり、基幹エネルギーの一角を占めるものであって、その現実から目を背けては社会は成り立たないのです。今は日本が“インフラ二流国”に転落するかどうかの瀬戸際です。震災後の負の連鎖を断ち切らなければなりません。
 この状況を乗り切るには産業構造の転換などマクロ政策とともに、モノづくりにおける生産・保全面での創意工夫が欠かせません。東日本大震災前の生産性、付加価値をより少ないエネルギー使用量で実現すれば競争力の向上につながるのも明白で、危機をチャンスに変える発想の転換が求められます。その一つが省エネ革新であり、電気設備の効率よい運転がキーポイントになります。

エイテックの「高調波知的劣化診断システム」は、燃える思い〔今月花ヤマツツジの花言葉〕の努力が実った革新的なものであり、電気設備の寿命を延長させてコスト低減を図ることもさることながら、生産性の向上、環境保全の視点からも重要性が再確認されてきています。特にこのシステムは電気設備の省エネ性を評価し、高効率運転によるエネルギー使用量の削減を可能にしたものです。具体的には設備への供給電力と負荷が消費する電力が効率よくバランスしているかどうかを調べ、最適な運転状態を実現させることによって省エネ性を高めるものです。電力バランスを負荷モード(高位モード、安定モード、低位モードがある)と定義し、設備を安定モードにて稼動させれば、設備損失が最小になり、効率が平均310%向上するため、省エネ性に優れた設備運転ができるという省エネ革新を推進する最適なシステムなのです。













   山つつじ(ヤマツツジ)
   花言葉「燃える思い・努力」

  
                                                  2011年5月19日
来月のメッセージも是非ご覧下さい 
                             エイテック株式会社


2011年4月5日(火)

KS405−084
4月の社長メッセージ 
    節電と機器寿命延長をサポートする「高調波知的劣化診断システム」
               〜東日本大震災が設備保全に与えた教訓を活かそう!〜 

 2011311日午後に発生した東日本大震災の被害に遭われました皆様に、心より御見舞申し上げますと共に、犠牲になられました方々と御遺族の皆様に対し、深くお悔みを申し上げます。被災地の一日も早い復興と皆様のご無事をお祈り致しております。
 この東日本大震災は、大地震、大津波、放射能汚染の未曽有の三重苦となって、鉄道・電気・ガス・水道などの社会インフラはもとより、産業界のみならず市民生活にも大打撃を与えました。中でも、危機的な状態が続く東京電力福島第一原子力発電所の14号機。喫緊の課題は、原子炉の冷却や放射能に汚染された大量の水の処理です。廃炉に持ち込むには長い時間がかかり、すべてを終わらせるには数十年がかりの作業になると指摘されています。全国で54基ある原子力発電所が、東日本巨大地震で発生した10メートル級の津波を想定しておらず、想定を超えた津波に襲われると福島第一原子力発電所と同様の電源喪失に陥る恐れのある事が、読売新聞社の調査で分りました。今回の津波では、福島第一原発が想定を上回る14メートルの津波に襲われたと見られるほか、日本原子力発電東海第二発電所と東北電力女川原発2号機も、非常用の発電機を海水で冷やすポンプや熱交換機が水没で故障し、一部が使用不能になったのです。東京電力は供給電力が大幅に減少したため、計画停電を行っていますが、このあと余震による被害が続くと大停電になることも考えられます。従って政府は、企業に対して節電の「自主行動計画」を提出するよう要請する方針を固めました。1年で最も電力使用量が高まる78月に向けて大口需要者の電力利用を抑制するための対策となります。政府は同時に、政令で企業の最大消費電力に強制的な限度を設ける「使用制限」などの発動も検討する方針です。しかし、社会インフラが停電になることや経済活動を支える生産や流通機能がストップすることを考えますと、計画停電以外の節電計画、つまり「省エネ」対策を徹底すべきと考えます。

 この大震災の影響が特に著しかった宮城県、岩手県、福島県、そして茨城県には、鉄道やプラントなどの基幹産業の機器・部品メーカーが数多くあるため、その操業停止は日本全国に影響を与えています。JR西日本では交換用の車輌部品が入手できず、運行車輌の本数を減らすなどの対応を余儀なくされています。
 そこで、その対策として「機器寿命延長計画」がクローズアップされ、保全そのものの有り方が見直されています。すなわち、従来のTBM(時間計画保全)からCBM(状態監視保全)へ移行させることにより、機器の寿命延長を図ろうとするものです。

「寿命延長」のためには、設備稼働の状態把握、要因解析、状態評価、対策実施が必要となりますが、そのためのツールとして、設備診断データより劣化の確度を数式化した「人工知能」搭載の「高調波知的劣化診断システム」は最適なものと言えます。
 
またこのシステムの特長は、省エネ診断も可能なことです。すなわち、モータへの供給電力と負荷が消費する電力とが整合(マッチング)している状態かどうかをみるのです。これは電力バランスを診断することで可能になりました。その結果、供給電力を効率よく負荷へ供給する整合装置(例えばインバータ)を最も効果的に設置することが出来るのです。つまり、モータや負荷のロスを少なくして省エネ性を向上させ、「節電」を図るのです。
「高調波知的劣化診断システム」
KSシリーズの、持続性のある〔今月の花シモクレンの花言葉のような〕活用によって、設備保全が劇的に改善されることを願って止みません。













     紫木蓮(シモクレン)
     花言葉「持続性」

  
                                                  2011年4月5日
来月のメッセージも是非ご覧下さい 
                             エイテック株式会社


2011年3月9日(水)

KS405−083
3月の社長メッセージ 
    「高調波知的劣化診断システム」は設備管理の救世主
               〜高調波診断は故障物理をベースとした計画的設備管理をサポート〜 

 日本の設備産業がますます国際競争力を強化することを問われる中、設備管理技術の高度化は、安全性、経済性の確保等の観点から喫緊の課題です。特に近年、設備産業界では事故が多発しており、従来の設備管理技術ではすでに対応が出来ない問題が顕在化してきています。これらの課題を克服するためには、従来の経験と確率論に基づく管理手法から脱却し、故障物理のような決定論に基づく設備管理技術をベースとし、システム化技術やIT技術などの積極的な活用による高度設備管理技術の構築が、信頼性向上のために一層求められています。
 設備の信頼性とは、その設備が何時故障するかを評価することであり、現実的には最も困難な問題であると言うことができます。すなわち、故障物理に従って異常を想定し余寿命を予測する考え方は、設備の評価に効果が期待できますが、現実には誤差がつきものです。こうした誤差が生じる原因は、設備の個体差や異なる原因・条件が混在するためですが、こうした原因による誤差をできるだけ排除し、設備の機能を正常に維持し、本来の生産性を確保するためには、設備状態の変化に柔軟に対応しながら、しかも計画的に設備管理を実施することが必要です。
 この計画的な設備管理にとって必要な情報は、網羅的:「どこで起きるかを全てカバー」(部品レベルでの劣化の網羅)、論理的:「何がどのように起きるか」(劣化を論理的に選択)、予測的:「何時起きるか」(部品レベルでの寿命予測)、管理的:「どうすれば管理できるか」(部品・部位ごとに保全周期を決定)、の四つの要素から成っています。
 これら四つの要素についての問題点を解決するための計画的設備管理の手順は、@設備劣化の要因を網羅的に拾い出すために、「機能展開」を行う。すなわち、機能別に部品・部位レベルまで展開して管理する。A各構成要素に関し特定の劣化がどのようなメカニズムで進展するか「故障物理」によって想定する。B劣化現象を表現する「数学的モデル」を同定して、そのパラメータを日常の設備管理業務で管理する。という構造になります。

 この計画的設備管理をサポートするツールこそ、正にエイテックの「高調波知的劣化診断システム」と言えます。そのベースとなる「故障物理」は、設備の部品・部位にかかるストレスと故障メカニズムの関係を知る上で重要なものです。その一例をモータ巻線にかかる「熱ストレス」について考えてみます。 巻線導体を形成している結晶や分子(原子で構成されている)はそれぞれ固有の振動数を持っていて、局部的にでも熱が加えられるかあるいは発生すると、原子間の結合が微小範囲で激しく振動するようになります。この振動が活発になると熱物理学でいう熱振動(熱共振現象)が生じ、物体の温度を更に上昇させます。その結果、巻線の絶縁劣化や、温度上昇に因り軸受のグリスが変色・析出して軸受劣化に進展します。熱振動は巻線に、また間接的には軸受に熱ストレスとなって作用します。
 この熱ストレスをも検出できる高調波診断技法は、「神秘」なほどに〔今月の花スイセンの花言葉のように〕設備の故障メカニズムを明らかにしてくれるのです。













       水仙 (スイセン)
     花言葉「神秘、気高さ」

  
                                                  2011年3月9日
来月のメッセージも是非ご覧下さい 
                             エイテック株式会社


2011年2月7日(月)

KS405−082
2月の社長メッセージ 
    「高調波知的劣化診断システム」はリスク管理の担い手
                  〜全員参加による全社的リスク管理体制を構築しよう!〜 

 電気設備のリスク管理については、この社長メッセージで何度か取り上げましたが、今回は「全社的リスク管理とはどういうことか」を、工場火災という事例を基に考えてみます。
 工場が火事になることにより、各部署にどのようなリスクがあるのでしょうか。販売・営業部ならば、製造ラインがストップすることにより顧客への商品の納品に遅延が発生します。対応によっては信頼を失墜、顧客を喪失します。経理・財務部においては、工場や機械の修復にかかる費用の資金をいかに調達するか。総務・法務部では火災による近隣への賠償、火災発生における違法行為はなかったか。資材・購買部にあっては原材料や設備の購入計画を大幅に見直さなければなりません。生産・製造部は、商品の喪失以外に商品の製造ができないので、利益を得る手段を失い企業の根底を揺るがしかねません。保全・工務部では使用可能な設備のチェックと修復に追われる、といったことなどのリスクを認識する必要があります。
 工場火災の一例として、200398日に発生したブリヂストン栃木工場の火災事故は記憶に新しいものです。この火災により、タイヤ165000本が焼失しています。火災の原因は、精錬工程のバンバリー(精錬機)の過熱により床上に堆積していた発泡剤が着火、近くに保管していた薬品などに燃え広がったことが原因の一つとして特定されています。この事故による損失額の総額は、直接的損害額、復旧するまでの営業損失に加え、精錬工程再建などに要した再投資額として400億円、受取保険金額を加味しても損失額が360億円にのぼったのです。
 リスクはあらゆるところに潜在しています。「リスクがある」ということは、決して恥ずべきことではありません。リスクはどの企業にも同様に潜在しています。恥ずべきことは、それらのリスクが認識できていないことです。経営層だけではなく、全社員がリスクに対する感度を向上させ、それぞれの責任範囲におけるリスクに対し、リスク担当者(リスク・オーナー)としてそれを管理する企業風土を作り上げねばなりません。各部門の担当者がリスクを洗い出し、それを管理することにより、組織内に潜在するリスクを全社的に管理するというのが全社的リスク管理の基本的な考えです。

 ブリヂストンの火災事故では、生産部門と保全部門だけでなく、全社的にそういったリスク管理がなされていなかったと言わざるを得ません。さらに、経営やマネジメントとの一体化が薄かったことも、全社的リスク管理体制の欠如からくるものではないでしょうか。これからは、生産の経済性を高めるための「生産保全」をさらに進展させ、全員参加による総合生産保全(TPMTotal Productive Maintenance)という小集団活動をベースにした自主保全へ進化させねばならないと言えます。
 生産しながら保全をする際に有効な「高調波知的劣化診断システム」を組み入れ、生産システム効率化の極限追求(総合的効率化)をする企業体質づくりのために、トップから第一線従業員まで全員が参加し、全社的リスク管理体制を、向上心〔今月の花(木)五葉松の花言葉〕を持って構築することが必要になるのです。













       五葉松 (ゴヨウマツ)
     花言葉「向上心 勇敢」

  
                                                  2011年2月7日
来月のメッセージも是非ご覧下さい 
                             エイテック株式会社


2011年1月6日(木)

KS405−081
1月の社長メッセージ 年頭の挨拶
    〔Vision(ビジョン)Victory(勝利)・Value(価値)〕
                〜「安全」のビジョンを勝利に導き、診断の価値を高めよう〜 

 新年あけましておめでとうございます。
 昨年518日〜20日に中国(上海)で開催された軌道交通国際会議に出席し、「安全文化を支える保全技術」と題して講演を行いましたが、その骨核となる「安全思想」については、同年4月の社長メッセージ“「高調波知的劣化診断システム」が高調波の文化を築く”(KS405-072)の中で述べたものです。安全のためにどんな社会を築けばよいのか、全ての人が考えなければならない時代を迎えています。
 産業と安全のかかわりは深いにもかかわらず、経営戦略に安全をどう位置づけるかなど、企業内での議論は十分ではありません。法規制を守るといった受け身の対策にとどまらず、安全を企業の競争力と捉えて積極的に取り組むことが必要です。そのために企業や社会の仕組みをどう変えればよいのか、安全技術やリスクマネジメントについて考えてみたいと思います。
 企業の安全に対する認識は高まっていますが、環境問題に比べると概してスタンスが定まっていません。体系的な取り組みが不十分というのが実情です。事故を起こすと大きなダメージを受けることはどの経営者も認識し、安全が大事だと言っています。ただ安全は現場の問題だと考えている経営者がまだ多いのです。経営における安全責任には二つがあります。まず事前に手を打つ予防保全の責任、もう一つは事故が起きた後の責任です。事故が起きてからの対策だけでは、いつまでもモグラたたきを続けるようなものです。また、「安全第一」という言葉が邪魔になることもあります。安全第一という掛け声には誰もが賛同し、反対できない理想のものとして語られがちです。だから、そこで考えが止まります。

 本来はそこから、あるべき姿と実力を踏まえた明確なターゲットを定めなければなりません。安全が経営指標になっていないのも問題です。規制への対応、発生した事故への対応にとどまっているのです。規制に対応するだけならどの会社も差はつきません。経営戦略の中に安全を位置づけて企業の競争力につなげようとするならば、他社と同じことをしているだけでは差別化できません。企業は環境対策については積極的にアピールしています。安全について環境対策のように発信できていないのは、安全とは何かということが組織の中で議論されていないことも一因です。事故を起こしていないから安全だという考えでは、事故が起きない限り外に向けて自社の取り組みについてメッセージを発信することはありません。そして安全のポリシーがないから目標も設定できていないのです。

 21世紀を勝ち抜くには、安全においても競争が必要になります。安全は企業活動の総合的な成果であり、社会の信頼感を醸成することでブランドイメージも高まるのです。
 エイテックの経営理念は、d-Value(診断の価値)の追求によって顧客に感動を与え、社会の適者を目指すことです。物事に動じない〔今月の花ハボタンの花言葉のような〕確固たる「安全を築く」というビジョンを持って、企業の設備安全に貢献できるよう安全技術の向上に努めていきたいと願っています。














     葉牡丹 (ハボタン)  
    花言葉「物事に動じない」

  
                                                  2011年1月6日
来月のメッセージも是非ご覧下さい 
                             エイテック株式会社


2010年12月6日(月)

KS405−080
12月の社長メッセージ 
    安全を守る「高調波知的劣化診断システム」          
            〜「計画保全ネット」で高経年時代の「設備総点検」を実施しよう!〜 

 日本国内に立地する多くのプラントなどの製造施設や貯蔵施設など、さらには鉄道、エネルギー施設などの社会資本系施設において、「高経年設備」は大きな課題です。特に、設備ビンテージ(平均年齢)の高い「ストック設備」を多く抱えた装置工業では深刻な状況にあり、すでに企業単体で解決できる範囲を超えた共通の課題となっています。
 高経年時代の設備保全には、経営を含んだ技術マネジメント(仕組み)と各固有の技術との「最適な組み合わせ」の方法が求められています。即ち、現実的で実行可能な「網羅性と経済性が両立するメンテナンスプログラム」です。このマネジメントと各要素技術が接する領域を「設備総点検」と呼んでいます。設備総点検プログラムは、高経年が著しい日本産業界の競争力を維持するために有益であり、マネジメントと技術がその両輪であると考えています。
 そこで、マネジメント面を先ず考えてみます。工場およびプラントなどの経営は、現場の基礎力を土台として「設備保全」と「生産管理」の柱によって成り立っています。従って「設備保全」は、経営と生産上の課題を解決しながら工場経営を支える太い柱でなくてはなりません。こうした意味での「設備保全」を達成するためには、土台である現場の力を含めた「工場経営を支える技術マネジメント」、即ち「計画保全」の仕組みづくりが必須です。従って、この仕組みを維持しスパイラルアップしていく「計画保全力」の向上が、高経年時代の設備保全の基礎となります。
 この「計画保全力」を継続的に向上させる駆動力として、エイテックでは「高調波知的劣化診断システム」KSシリーズを提供しています。このシステムは設備内部に生じているストレスを診断・解析することによって潜在的欠陥を見い出し、これにより戦略的に保全課題を抽出し、保全の仕組みを再構築して結果を経営に対しレビューします。そして次期の計画立案に反映させるという、「企業の自己評価体制」を構築する支援ツールになり得ます。設備の高経年時代を迎えている今日、このKSシリーズを活用して、企業の自己評価体制を確立していただきたいと願っています。

 設備保全の「網羅性と経済性の両立」は、保全マネジメントと技術が融合して初めて成し遂げられます。従来の設備保全は検査計画のみが議論される傾向にあり、設備の生涯を全うする保全としての対処法は各企業の判断に委ねられていました。設備は検査のみではなく「補修・改善」、「更新」などの適用によって、その後の検査体制を含めた全体の保全計画や費用計画も異なってきます。
 従って、リスク評価に基づく効果的な検査計画を主体として、「保全サイクル」全体を構築する必要があります。更に、「保全サイクル」全体の構築が、より合理
的な検査計画の策定に結びつき“正のスパイラルアップ”が働くようになるのです。
 このように、保全を単独の検査技術だけで捉えるのではなく、「保全サイクル」全体として捉えることが重要で、これがまさに保全マネジメントと技術が融合した姿であり、魅力ある〔今月の花マユミの花言葉のように〕安全を守る「計画保全ネット」が構築できるのです。













   真弓 (マユミ)  
 花言葉「(あなたの)魅力(を心に刻む)」

  
                                                  2010年12月6日
来月のメッセージも是非ご覧下さい 
                             エイテック株式会社


2010年11月4日(木)

KS405−079
11月の社長メッセージ 
    「高調波知的劣化診断システム」は戦略的保全システム          
            〜「現場力」と保全経営力」のハイブリッド化で利益を最大にしよう!〜 

 20082月の社長メッセージ(KS405-046)で、日本プラントメンテナンス協会が提唱しているMOSMSMaintenance Optimum Strategic Management)について述べましたが、このMOSMSの考え方は、今後の保全の有るべき姿を示していると言えます。
 
従来、設備保全を「壊れたら直す」補修という狭い枠組みで捉え、その結果、保全を利益を生まないコストセンターとしてのみ認識する傾向がありました。そのため設備更新や人材配置に適切な投資がなされず、それが手抜きにもつながって、災害や品質の事故多発の要因になっています。
また、事故多発に関連して、装置・設備のリスク管理という新しい視点が各企業においてクローズアップされてきました。さらに、保全の主体が設備を設計・製作しプラントを建設してそのマニュアルを作ってきた世代から、次の世代に代わってきています。現在の世代は、設備をできるだけ長く使う視点から設備を保全する世代と言え、人材として要求されることも従来と大きく変化しているなど、企業から多くの課題が投げかけられています。これは各企業の生産保全が“現場任せ”の傾向が強く、経営やマネジメントとの一体化が薄いことが大きな原因と考えられます。
 エイテックの「高調波知的劣化診断システム」はMOSMS実践の保全システムであり、その活用による最終目的は、経営者、従業員、顧客、株主などの利害関係者(ステークホルダー)の利益の最大化にあります。そのためにプラントおよび設備の全ライフサイクルの各段階で期待される機能を保ち、ロス・リスクを最小にする保全システムの構築が不可欠となります。同じ原因から発生して顕在化したものがロスであり、潜在しているものがリスクと定義されますが、ロスの発生を防ぐにはリスクを極力少なくしなければなりません。リスクは設備や人などその原因となるものの状態・事象に係わるため、これらを的確に把握することが重要になります。設備については、その内部に発生している異常兆候、原因、部位、程度を明らかにして初めて確立されるものであり、極めて高度な技術が必要です。加えて、この設備内部に発生している異常兆候(事象)に対して、具体的対策を立てて修正することが求められます。すなわち、設備の故障やトラブルが起きる前から対処する「プロアクティブ保全」が「現場力」となります。また、保全が経営レベルとして認識される時、経営の要求に応える「保全経営力」が強化されるのです。

 ロス・リスクを最小にして利益の最大化を図るには、プロアクティブな「現場力」とリスクに対処する「保全経営力」のハイブリッド、それが戦略的保全システムであり、「高調波知的劣化診断システム」KSシリーズは、そのトップランナーと言えます。生産ラインの停止などによる機会損失ロス・リスクや、火災・爆発などの事故による産業災害ロス・リスクなどを最小にして、企業の永続的な経営を可能にするKSシリーズは信頼に足る〔今月の花きくの花言葉のような〕システムなのです。















  菊 (キク)  
 花言葉「(私を)信頼(してください)」

  
                                                  2010年11月4日
来月のメッセージも是非ご覧下さい 
                             エイテック株式会社


2010年10月4日(月)

KS405−078
10月の社長メッセージ 
     人間の判断をロジック化した「高調波知的劣化診断システム」          
            〜リスクの視点から見たメンテナンス・レビューを実施しよう! 〜 

 電気設備のリスク管理としては、20097月の社長メッセージ(KS405-063)でも取り上げましたが、メンテナンス・レビュー(MRMaintenance Review)、いわゆる「保全審査」が有効であり、設備評価の信頼性向上につながるものです。このメンテナンス・レビューは、検査の実施時期に加え、実施した検査の有効性と劣化度合いを定期的に評価し、それらの結果を総合的に検討して、次回の検査計画において適切な検査処法(対策の内容と時期)を提案する仕組みなのです。この手法によって、次回検査時期を適正化していくことで、保全コストの適正配分が可能になります。
 設備の劣化因子(高調波診断ではストレス)ごとに検査の有効性と損傷度合いや、過去の検査時期を考慮した次回の検査時期の設定は、非常に複雑なロジックが必要ですが、実はメンテナンス・レビューは、人間がどう判断していくかをロジック化したものなのです。人間は、さまざまな情報を定量化せずに、結果を出力することができます。しかし経年劣化が進んでいる設備に対する曖昧さは、ときとして許容範囲を割り込む可能性があります。ましてや初期故障や偶発故障期間の異常・劣化に対しては許容範囲外であり極めて困難です。すなわち、定量化した判定を一つずつ行っていくのは物理的に非常に大変な作業になります。
 そこで、これらのロジックをコンピュータの人工知能搭載ソフトに落とし込み、高度な専門知識がなくても入力できるように構築したものがエイテックの「高調波知的劣化診断システム」なのです。入力内容はメンテナンス履歴を除きプルダウン式とし、出力内容は設備の劣化度、劣化判定及び診断周期の他に、機器内部で発生している現象(事象)と処法(対策)を報告書形式として提出されるテキスト内容になっています。

 このメンテナンス・レビューの仕組みは、1回実施しただけでは効果が十分でなく、保全という性格もありますが、定期的にレビューしてこそ信頼性も高く有効な手法となります。しかし弱点設備は、メンテナンス・レビューを定期的に行うことで減少はしてもなくなることはありません。それは、レビュー時点で新たな弱点設備が発生するからです。新たに弱点化する設備には、限界検査期限が終了する設備もあって、弱点となる設備は時間の経過と共に変わっていくのであり、設備管理はまさに生きていると言えるのです。こうした現状をよく理解し、効果的に保全コストを配分するよう考えなければなりません。
 メンテナンス・レビューを継続的に行って、リスクに合わせてプラント内で弱点となる設備を抽出し、重点的に保全費を投入するシステムの構築は、設備管理に活力〔今月の花ススキの花言葉〕を与え、安全なプラント操業を実現し、設備リスクの低減を図ることができるのです。














   花ススキ (別名:尾花、カヤ)  
    花言葉「活力・勢力」

  
                                                  2010年10月4日
来月のメッセージも是非ご覧下さい
                             エイテック株式会社